給与所得の特性

会社員の給料が上がらない本当の理由


お金を増やす4つの方法のうちのひとつが、給与所得を得る、すなわち給料で増やすという方法です。日本においては、お金を得るための手段として最も一般的な方法と言ってもよいかと思います。給料を貰う立場の人を、被雇用者と呼びますが、一般的に会社員と呼ばれる正社員を始め、パート、アルバイト、派遣社員などの非正規雇用者も含まれます。このように考えると、日本人のほとんどが、被雇用者として働いた経験があるのではないでしょうか。それでは、どれだけの被雇用者が、給料に満足をしているのでしょうか。正規雇用者である会社員でさえも、満足していないという声を多く聞きます。なかなか給料が上がらないという声もよく聞きます。そこで、会社員の給料が上がらない本当の理由について、考えてみたいと思います。

 

会社員の給料が上がらない本当の理由、それは、ビジネスの基本に立ち返ればすぐにわかります。ビジネスとは、事業を立ち上げた経営者を主体に全てが形作られています。経営者が事業を行っているわけですから、当然のことです。そこで、経営者の立場で考えてみましょう。ビジネスというのは、売上から経費を差し引いたものが利益です。利益を増やすことが目標ですから、そのためには、売上を増やすことと経費を減らすことを考えます。このうち、経費を減らすことに着目してみましょう。経費の中で特に多くを占めているのは何でしょうか。それは、人件費です。もちろん、会社によってはそうでない場合もありますが、人件費は特に目に付く経費であることは事実です。会社にとって従業員は大切ですので、経費削減のためにむやみに給料を下げるようなことはしませんが、適正なバランスを保つための努力をしています。つまり、むやみに給料を下げることはしないが、むやみに上げることもしないのです。これが、会社員の給料が上がらない本当の理由です。非常に単純で当たり前のことのようですが、とても重要なポイントです。なぜ重要なのかというと、会社員である以上、給料が上がらないことは大前提として受け入れ、その上でどのような選択肢を選ぶのかという視点に立つべきだからです。もちろん、会社員として、つまり被雇用者として働くのではなく、ビジネスの主体である経営者として事業を立ち上げるという選択肢もあるのですが、そのどちらかを必ずしも選ばなくてはいけないという訳でもありません。この点については、後ほど改めて触れますが、どのような選択をするにしても、まずは会社員と自営業者の、メリットとデメリットについて知る必要があります。そこで、代表的なポイントに絞り、それぞれの視点から、会社員でいることと起業することの、メリットデとメリットを解説したいと思います。

 

(1)社会的評価

会社員と自営業者の違いが顕著に表れるのが、社会的評価です。これは日本特有の特性になるのですが、日本は、会社員を非常に高く評価する仕組みになっています。例えば、不動産関連を見てみるとよくわかるのですが、会社員は簡単に住宅ローンを組むことができますが、自営業者はそれが非常に難しいのが現状です。賃貸住宅を借りる場合でも、会社員は簡単に借りられますが、自営業者はそれが難しいのです。私の友人で、夫婦共に自営業者という人がいるのですが、借りられる賃貸住宅が見つからないと困っていました。夫婦共に自営業者として十分な稼ぎがあり、実績がしっかりとあるにもかかわらずです。これが現状なのです。ちなみに、不動産投資の話をしているのではなく、居住を前提とした話ですので、誤解のないようにしてください。また、クレジットカードも同様で、会社員は簡単に発行できるのですが、自営業者の場合は一段と審査のハードルが高くなります。このように、金融に関する仕組みおいては、日本社会全体が、会社員を高く評価するようになっているのです。それでは、なぜ日本の社会は、会社員を高く評価するのでしょうか。その理由は、収入の安定性にあります。収入の安定性については、次の項目で詳しく説明したいと思います。

 

(2)収入

会社員の最大のメリットとも言うべきポイントが、収入の安定性です。毎日会社に通勤し、定められた勤務時間の仕事をすることで、必ず収入を得ることができます。定められた時間の労働に対して支払われるため、労働対価、あるいは時間対価と呼ばれます。これは、会社の業績に関わらず、必ず労働対価として支払われますので、極めて安定性があると言えます。自営業の場合、特に法人化していない個人事業主の場合は、事業の業績がそのまま収入につながりますので、事業が安定していなければ収入も安定しません。働いた時間はまったく関係ないのです。このように考えると、会社員の収入がいかに安定しているかがわかります。言い換えれば、会社員として働くことは、収入に保険をかけることと言うこともできます。保険によって、収入におけるリスクを極限まで低減しているのです。このような安定性という最大のメリットを享受する代わりに、得られる金額が安いのです。働いた時間に対して支払われる金額が、極めて低いのです。これは、さきほど説明した通り、人件費は経費であるからです。ビジネスは、事業を行う者にとって有利でなければ成り立ちませんので、当然です。このように、時間対価が安い代わりに、安定性を得ていると考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

 

(3)責任

会社員、すなわち従業員という立場である以上、業績についての責任を金銭的に追及されることはありません。つまり、会社員は、会社の業績に対して金銭的な責任を負う必要がありませんので、自分自身の資産を保全するという側面において、リスクが非常に低いと言えます。個人事業主であれば、さきほど説明した収入の安定性の問題にとどまらず、事業が赤字となれば、それは自分自身の資産が減ることを意味します。このように、資産保全という面でも、会社員には大きなメリットがあるのです。

 

(4)年金

社会的評価の項目でも解説した通り、日本は会社員を高く評価する仕組みになっていますが、社会保障制度においても、会社員は非常に優遇されていると言えます。その代表的な例が、年金制度です。日本の公的年金制度は、会社員と自営業者で、制度の構造が大きく違います。それでは、日本の公的年金制度について、簡単に解説したいと思います。下図に示す通り、日本の年金は2階構造になっています。厳密には3階構造ですが、ここでは会社員と自営業者の比較をするために、わかりやすく2階構造の範囲内で説明します。まず、1階部分ですが、これは、国民全員が加入する国民年金(基礎年金)になります。この1階部分に関しては、会社員も自営業者も同じです。そして、大きく異なるのが2階部分です。自営業者は、1階部分の国民年金に加えて、より多くの金額を受け取るために、2階部分として国民年金基金付加年金などに加入します。一方、会社員は、はじめから2階部分に厚生年金がありますので、別途加入する必要がありません。しかも、厚生年金の保険料は、会社が半分負担する仕組みですので、自営業者と比較して極めて優遇されていると言えます。

 

 

このように、将来の生活資金を公的年金に頼ることを前提に考えると、会社員の方がはるかに有利ですので、自営業者の場合、公的年金に頼らない資産計画を立てることが必要となります。年金の話をしていると、支払った保険料に対して、受け取る年金の額が少ない時代であることへの不満の声をよく耳にしますが、これは仕方のないことです。そもそも日本の公的年金制度は、自分自身の将来のために保険料を支払っているのではなく、今現在の労働者が今現在の年金受給者を支えるという「世代間扶養」の仕組みなのです。この仕組みである以上、年代別人口割合の変化とともに連動するものなのです。自分が実際に受給できる年金の金額が気になる方も多いかと思いますが、将来の資産計画のためにも、一度年金シミュレーションをしてみるのもよいでしょう。インターネット上に年金シミュレーションサイトは多く存在していますが、セキュリティ面で信頼のおけるサイトを利用し、確認してみることをお勧めします。

 

>「日本年金機構(利用登録が必要)」で確認する(外部リンク)

>「三井住友銀行の年金資産シミュレーション」で確認する(外部リンク)

注)外部サイトのセキュリティ面はご自身で確認し判断してください

 

(5)時間

さきほど、収入の項目でも解説しましたが、会社員は労働した時間に対して対価が支払われます。すなわち、時間対価です。時給という概念は、ここから生まれています。そのため、多くの給料を得ようと思うと、長い時間働く必要が出てきます。ただでさえ時間対価が非常に低いのが給与所得ですから、得られる金額の割に拘束時間が長いと言えます。時間と所得のバランスだけを考えれば、これこそが会社員の最大のデメリットと言ってよいでしょう。時間を拘束されずに、効率的に収入を増やしたいと考えるのであれば、明らかに自営業者の方が有利です。

 

(6)その他

会社員と自営業者を比較すると、他にも多くの違いが存在ます。物理的な面としては、働く場所の制約に違いがありますし、金融制度面としては、さきほど説明した公的年金制度以外にも、税金保険など、様々な部分で違いが出てきますので、自分自身に直接関係する部分については、より詳しく学習し理解することをお勧めします。

 

 

以上のように、会社員と自営業者の、メリットとデメリットについて解説してきましたが、金融的視点から見た会社員の最大のメリットは「安定収入」であり、最大のデメリットは「非効率収入」と言うことができます。また、安定収入であることも含め、総合的に見てリスクが低いのは、やはり会社員です。リスクを極限まで抑えて安定的に少額のお金を得る手段が会社員である、と言えるのです。そういう意味では、会社員は、当サイトのコンセプトに完全に合致した、極めて理想的なお金を得る手段ということになります。

 

しかし問題なのは、給与所得というのは、あくまでもお金を得る手段であり、お金を増やす手段ではないということです。当サイトが最も重要視している、リスクを極限まで抑えて安定的にお金を「増やし続ける」手段にはなっていないのです。会社員である以上時間対価は非常に低く、収入は非効率的ですので、もし生活費による支出で差し引きゼロに近い状態なのであれば、永遠にお金は増えません。リスクは確かに抑えられていますので、お金が一気に減ることもありませんが、増えなければ意味がありません。それでは、会社員である以上、お金を増やすことはできないのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。考えられる手段はいくつかありますが、大きく分けると2つです。ひとつは、給料の高い会社に転職すること、もうひとつは、会社員以外の方法でお金を増やすことです。前者の、給料の高い会社については、また改めて別の記事で解説したいと思いますが、ポイントになるのは後者です。当サイトでは、お金の増やし方を4つに分類していますが、その4つとは、給料、ビジネス、権利収入、投資です。4つの意味については、別の記事で解説していますので、ぜひ理解しておいてください。

>4つのお金の増やし方を知る

 

これらのうち、ビジネスというのが、まさに先ほど説明した、自ら事業を立ち上げるということなのです。投資も有効な選択肢ではありますが、十分な余剰資金があることが前提になりますので、まずは余剰資金を作ることから始める必要があります。だとすると、やはり、ビジネスということになります。簡単に言うと起業をするということなのですが、会社を辞めて起業することが全てではありません。副業が認められる時代になっている今、会社員と自営業者のいいとこ取りをすればいいのです。だからこそ、いいとこ取りをするためにも、それぞれのメリットとデメリットを押さえておくことが大切なのです。

 

いいとこ取りをする上で、特に着目すべきそれぞれのメリットを改めて整理します。まず、会社員の最大のメリットは、「収入の安定性」です。一方、自営業者の最大のメリットは、「時間対価が高い」ということです。これらを合わせようとした場合の、働き方の例ですが、会社員の最大のデメリットは「拘束時間」ですので、時間を確保することを第一に考えた上で、最低限の給料はもらい続けられることを保険とし、個人事業として事業を立ち上げていくのがよいのではないでしょうか。もし、会社員以外の選択肢を全く考えないのであれば、給料の高い仕事について考える、もしくは時間を犠牲にして一時的に収入を増やし、余剰資金を投資に回す、このいずれかということになります。もちろん、これもひとつの選択肢です。話を戻しますが、会社員としての仕事は保険として最低限の給料をもらうことを目的の全てとするのであれば、拘束時間が短く、給料の低い仕事を選択し、その上で時間対価の高い個人事業を立ち上げる方法が、最も効率的で理にかなっています。立ち上げるべき個人事業の内容については、「ビジネスの種類」という記事で解説していますので、参考にしてみてください。このように考えると、もはやどちらが本業で、どちらが副業かわからないですね。私は、これからの時代は、「副業」ではなく、「複業」という考え方でいいのではないかと思っています。そして、結果的に自分の好きな仕事ができ、自分の望む生活ができるのであれば、「福業」と呼べるのではないでしょうか。

 

このように、日本においては会社員が特に優遇される傾向にあり、リスクを抑えるという視点においては会社員として生きていくこともひとつの正しい選択かもしれません。しかし、拘束時間が長く、時間対価が低いという大きなデメリットを抱えながら、会社員だけに執着することのメリットも時代とともに小さくなってきています。その理由は、会社員と個人事業の両立、すなわちいいとこ取りができる環境になってきているためです。会社員の給料が上がらない理由を考えるのであれば、給料が上がらないのは当然のこととして、安定性という最大のメリットを享受しつつ、時間対価の高い個人事業を立ち上げることもひとつの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。会社員のメリットとデメリットをしっかりと理解した上で、リスクを抑えてお金を増やしていくための自分に合った手段を慎重に考えていただければと思います。また、会社員と個人事業の両立について考える場合、それぞれにおいてどのような仕事を選択するかも非常に重要になりますので、「仕事の選び方」について解説した記事を参考にしてみてください。

給与所得=被雇用者の労働対価(時間対価)

会社員の給料が上がらない理由

・ビジネスは経営者が主体

・人件費の適正なバランスを保つ

 

会社員と自営業者のメリットとデメリット

(1)社会的評価

会社員を高く評価する仕組み(不動産・金融)

(2)収入

安定収入=収入に保険をかけること

(3)責任

業績に対する金銭的責任なし=資産保全

(4)年金

社会保障制度で会社員は特に優遇

(5)時間

得られる金額の割に拘束時間が長い

 

会社員の最大メリット=安定収入

自営業者の最大メリット=時間対価が高い

<いいとこ取り>

拘束時間が短く給料の低い仕事を選択しその上で時間対価の高い個人事業を立ち上げる方法