採用面接②

面接官が教える!採用面接で合格率が劇的に上がるストーリー構成


就職や転職において必ず通るべき難関である採用面接ですが、採用面接で合格者を決める仕組みと面接官や会社側の事情を知ることで、合格の可能性が飛躍的に上がることを、前の記事で解説しました。ここでは、より具体的にイメージを膨らませていただくために、具体的な事例を用いて解説していきたいと思います。もしまだ前の記事を読まれていない方は、先にそちらの記事をお読みいただき、採用面接で合格者を決める仕組みを理解してください。

 

>採用面接で合格者を決める仕組み

 

それでは、ここからは、必ずと言っていいほど採用面接で聞かれる「自己PR」を例にとって話を進めます。前の記事で、協議型の採用面接においては、面接官にメモを取らせることが重要であると説明しました。そこで、メモを取らせるストーリーの作り方について、順を追って解説します。

 

自己PRの場合のメモを取らせるストーリーは、以下の手順で作成していきます。

自分の定量的、具体的な過去の実績を洗い出す

分野が偏らないようにインパクトの強いものから2個〜3個選ぶ

それぞれのエピソードに隠れた自分の強みを探す

その隠れた自分の強みをひとつの単語で言い表す

 

まず、どのようなネタをストーリーに仕立てていくかですが、自分の過去の実績を洗い出すことから始めます。この実績は、定量的具体的であることが重要です。過去に受賞した賞や、取得した資格、スポーツの大会での成績、何かの競争ごとの順位、仕事やアルバイトでの売り上げ金額、成約件数、自分が育てた弟子の人数、出版した本の数、このようにいくらでも定量的で具体的な実績は考えられますので、可能な限り洗い出してみてください。定量的で具体的であれば、華々しい成績でなくても構いません。

 

次に、洗い出した実績の中から、インパクトの強いもの、つまり第三者からみて「スゴイ」と思われやすいものを2個〜3個選びます。選び方のポイントとしては、なるべく分野が偏らない方が理想です。例えば、勉強系、スポーツ系、仕事系のように、分野を分散させます。あえて3つともスポーツ系にしてインパクト感を増す手段もありますが、スポーツしかできないというように解釈されてしまうリスクも伴うため、できれば分野を分散させることをお勧めします。

 

これで、エピソードを語る内容が2個〜3個決まりましたので、あとは具体的にストーリーを組み立てていきます。ここからは、更に具体的な事例を用いて説明していきたいと思います。例えば、「自己PR」として選んだ過去の3つの実績が、「英検1級」「マラソン2時間台」「接客コンテスト全国3位」だとして、これらを用いてストーリーを組み立ててみます。

 

例1)英検1級

ここでは英検1級が定量的な実績になります。そこで、英検1級に合格するまでのエピソードと、そこに隠れた自分の強みを探します。エピソードが、5年間毎日勉強し続けた結果合格できたという内容だったとしましょう。この場合、そこに隠れた自分の強みとしては、「毎日継続して努力できる」という点が挙げられるのではないでしょうか。表面的な強みは「英語ができること」だと思いますが、それは英検1級で伝わりますので、そこを改めてアピールする必要はなく、隠れた強みを考えるのです。そして、「毎日継続して努力できる」という隠れた強みを、ひとつの単語で言い表してみます。「努力家」という単語がよいのではないでしょうか。この「努力家」というのが、インデックスになるわけです。

 

例2)マラソン2時間台

ここではマラソン2時間台が定量的な実績になります。そこで、マラソン2時間台を達成するまでのエピソードと、そこに隠れた自分の強みを探します。エピソードが、フルマラソンの大会に5回チャレンジして5回とも完走、しんどいレースもあったが絶対に諦めず苦しさに耐え抜いた、という内容だったとしましょう。この場合、そこに隠れた自分の強みとしては、「苦しいことにも耐えられる」という点が挙げられるのではないでしょうか。表面的な強みは「マラソンが速いこと」だと思いますが、それは2時間台で伝わりますので、そこを改めてアピールする必要はなく、隠れた強みを考えるのです。そして、「苦しいことにも耐えられる」という隠れた強みを、ひとつの単語で言い表してみます。「忍耐力」という単語がよいのではないでしょうか。この「忍耐力」というのが、インデックスになるわけです。

 

例3)飲食店アルバイトの接客コンテストで全国3位

ここでは接客コンテスト全国3位が定量的な実績になります。そこで、アルバイトの接客コンテストで全国3位になるまでのエピソードと、そこに隠れた自分の強みを探します。エピソードが、大手飲食店チェーンでアルバイトをしていて、接客コンテストで優勝するために前年度優勝者の話を聞きにわざわざ北海道まで行った、という内容だったとしましょう。この場合、そこに隠れた自分の強みとしては、「自分の力を高めるための行動を惜しまない」という点が挙げられるのではないでしょうか。表面的な強みは「接客が上手なこと」だと思いますが、それは全国3位で伝わりますので、そこを改めてアピールする必要はなく、隠れた強みを考えるのです。そして、「自分の力を高めるための行動を惜しまない」という隠れた強みを、ひとつの単語で言い表してみます。「向上心」という単語がよいのではないでしょうか。この「向上心」というのが、インデックスになるわけです。

 

では、このようにして組み立てたストーリーを用いて、インデックス、エピソード、成果を意識した話をするとどのようになるのでしょうか。具体的な面接でのやり取りをシミュレーションしてみます。

 

面接官:

あなたの自己PRをしてください。

あなた:

はい、それでは3点ほどPRをさせていただきます。1点目は「努力家」であること、2点目は「忍耐力」があること、3点目は「向上心」があることです。

 まず1点目の「努力家」についてですが、私は英語のスキルを上達させるため5年間毎日勉強し続けた結果、英検1級に合格することができました。この、5年間毎日継続して努力し続けられたこと、つまり「努力家」であることが、私の強みです。

2点目の「忍耐力」についてですが、私はマラソンを走ることが趣味で、これまでにフルマラソンの大会に5回出場して5回とも完走し、2時間台のタイムを出しました。大変なレースもありましたが絶対に諦めない強い気持ちで、苦しさに耐え抜くことができました。この「忍耐力」こそが、私の強みです。

3点目の「向上心」についてですが、私は学生時代、大手飲食店チェーンでアルバイトをしていました。その企業では、アルバイトの全国接客コンテストというものがありました。私はその大会で優勝するために、前年度優勝者の話を聞きにわざわざ北海道まで足を運びました。その結果、優勝こそできませんでしたが、全国3位になることができました。この「向上心」こそが、私の強みです。

 

いかがでしょうか。少し簡略化しましたが、流れとしてはこのように話すことが大切です。それでは、このように話をすることで、なぜ面接官はきれいなメモをたくさん取ってくれるのでしょうか。それは、メモを取りやすい話の構成になっているからです。では具体的に見ていきましょう。

 

まず、インデックスを話した時点で、面接官の手元のメモは、このようになっています。箇条書きで、目次が書かれている状態です。

 

 

次に、1つ目のエピソードと定量的成果を話した時点では、このようになっています。定量部分に印を付ける面接官も多くいます。

 

 

これが、2つ目、3つ目と続いて、最終的にはこのようになります。きれいなメモが完成していることがわかるかと思います。

 

 

このメモを見れば、後からでも話の内容を思い出すことができますし、面接官全員が同じような構成のメモを取っているはずですので、

協議の際に面接官同士で合意が取れやすいのです。ある面接官はメモをしていても、ある面接官はメモをしていない、というような内容については、協議をしても「そんなこと言ってましたっけ?」といった話になり、高い評価はつきにくいのです。一方、全員が同じメモを取っていると、「確かにそうですね。」と全員が合意しやすくなり、即決で合格が決まったり、トップ通過となる可能性も極めて高くなります。だからこそ、面接官全員に、きれいで同じ内容のメモを取らせることが、合格するためには極めて重要なのです。

 

ここまでは自己PRを例に解説してきましたが、他の質問であっても、基本的な考え方は同じです。例えば、これもよくある質問事項のひとつですが、「入社したらどのように会社に貢献したいですか?」という質問だとしましょう。ここでは、新卒採用ではなく、転職で中途採用面接を受けているとしましょう。このような場面でも、やはり面接官にメモを取らせることを第一に考えます。考え方は既に解説していますので、早速実例を挙げてみます。

 

まず、インデックスですが、例えば「技術力」と「影響力」というワードを選んだとします。これら2つのインデックスに沿って、実際にシミュレーションしてみます。

 

面接官:

入社したらどのように会社に貢献したいですか?

あなた:

私の持つ2つの力で、御社を強くしたいと考えています。1つ目は「技術力」、2つ目は「影響力」です。

まず1つ目の「技術力」についてですが、私は前職で○○という商品の開発を任され、ほとんど一人で開発に携わり、売上20億円のヒット商品を作り上げました。この「技術力」こそが、御社に大きく貢献できると考えています。

2つ目の「影響力」についてですが、この20億円のヒット商品を開発した経験をもとに若手の育成に力を入れてきた結果、新規事業開発部という新しい部署が設立され、部長を任されました。このように、組織をも変える「影響力」は、御社に大きな変革をもたらし、御社の未来に貢献できるものと考えています。

 

いかがでしょうか。少し簡略化して例示しましたが、流れは掴んでいただけたのではないでしょうか。ここまで、新卒採用面接を想定した「自己PR」、転職中途採用面接を想定した「会社への貢献」を例に挙げて解説してきましたが、どのような質問に対しても、面接官にメモを取らせるという基本的な考え方は変わりませんし、ストーリーの組み立てにおける基本的な構成は変わりませんので、想定される質問ごとに応用していけば問題ありません。新卒と中途、あるいは業界によっても、想定される質問の傾向は若干異なってくると思いますので、実際に受験する採用面接で聞かれる可能性が高い質問に関しては、あらかじめ答えを用意しておくことが大切ですし、おそらくある程度の答えの準備というのは、ほぼ全ての受験者が行っていることと思います。その際に、面接官にメモを取らせることを第一に考えて準備をすれば、協議型の採用面接において、よい結果が得られる可能性が飛躍的に高まります。ここで解説した内容を参考に、採用面接でよい結果が得られる人が一人でも増えることを心より願っています。

自己PRの場合のメモを取らせるストーリー

・自分の定量的、具体的な過去の実績を洗い出す

・分野が偏らないようにインパクトの強いものから2個〜3個選ぶ

・それぞれのエピソードに隠れた自分の強みを探す

・その隠れた自分の強みをひとつの単語で言い表す

面接官全員にきれうで同じ構成のメモを取らせる

→協議の際に面接官同士で合意が取れやすい

→合格しやすい