日本の金融教育

日本と海外の金融教育を比べてみよう


世界3大発明と言われると、何を思い浮かべるでしょうか。一般的には、火薬、羅針盤、活版印刷の3つとされていますが、私個人としては「言語」「文字」「通貨」ではないかと考えています。昔から様々な大発明が生まれてきましたが、それら全ては、「言語」「文字」「通貨」がなければ誕生しなかったはずです。言語がなければ意思の疎通ができませんし、文字がなければ記録に残せませんし、通貨がなければ部品も買えず発明品の売買も成立しません。このように、現代の社会に極めて大きな影響を与えている3つの発明ですが、これら3つについて、みなさんはどの程度ご存知でしょうか。

 

まず、言語と文字ですが、いずれも幼い頃から学校や家庭で教育を受けてきたかと思います。日本で教育を受けられた方は、日本語を幼い頃ころから学習してきたことと思いますし、英語に関しても多くの方が学校で一定の教育を受けたことと思います。高校や大学で、その他の外国語を学ばれた方も少なくないのではないでしょうか。日本は英語教育が遅れていると言われますが、何をもって遅れていると言うかの定義によって議論は分かれるところかと思いますが、一定の教育がなされていることは事実です。また、NHKラジオで無料で多くの言語を学べるカリキュラムが充実しているのは、むしろ日本ならではかもしれません。

 

一方で、私の考える3大発明のうち「通貨」については、明らかに海外の先進国と比べて教育が遅れていると言わざるを得ません。みなさんは金融教育を学校で受けてこられましたでしょうか。もちろん、高校や大学の専門科目として学ばれた方はいらっしゃるかと思いますが、例えば小学校でどの程度の金融教育がなされてきたでしょうか。近年、金融教育の授業を取り入れるカリキュラムも出てきていますが、少なくとも1978年生まれの私が子供の頃は、全くそのような授業はありませんでした。遅れているどころか、皆無だったのです。資本主義社会で生きていく上で極めて重要な金融教育がなされてこなかったことは残念ですが、ようやくその重要性が叫ばれるようになった今、今後の教育に期待したいと心から思います。

 

それでは、海外の先進国では、どのような金融教育がなされているのでしょうか。まず、イギリスについて見てみると、金融教育の基本理念は3つの柱から成り立っており、それぞれの要点をまとめるとこのようになります。

A.金融についての知識と理解

貨幣とは何か、貨幣の源泉としての収入、貨幣はどこに行くか(家計支出・税金・社会保険料)

B.金融についてのスキルと能力

お金を管理する、お金を使う・予算を立てる、リスクとリターンの基礎知識を資産運用に適用する

C.金融についての責任

金融行動に対する自己責任と家族や社会への影響を考慮した社会的責任

 

また、具体的なケーススタディーを通して、より実践的なポイントを学べるカリキュラムになっています。

・現金で買う、あるいは、今買って後払いのどちらが最善の買い方かを考える。

・全国規模の銀行のローンと当座貸越を扱う銀行について調べ、利子率の違いを比較するために、年利子率と年平均利子率をいかに用いることができるかを考える。

・衣服を買うために十分なお金をどのように貯蓄するかを考える。

・生涯個人が行う様々なお金に関する決定について議論し、長期と短期のお金に関する責務の違いについて話し合う。

・職業選択の違いが、金銭的利益にどう影響するか予想し、金銭的利益と金銭では計れない報酬や個人的満足とを比較する。

 

ごく一部しか紹介できませんでしたが、このような内容を、小学校低学年から高校にかけて学びます。また、アメリカにおいても同様で、イギリスとの共通点も多く(もちろん相違点もあります)、幼い頃から金融の基本と実践をしっかりと学びます。資本主義社会で生きていく上で必要なことだからこそ、しっかりとした教育が行われているのです。

 

このような日本と欧米の金融教育の違いが、結果として、家計の金融資産構成にも表れています。日銀が発表している家計の金融資産構成のデータによると、日本人は50%以上を預金しており、米国の10%強を大きく上回ります。一方、株式や投資信託などの投資が占める割合は日米で完全に逆転し、日本は10%強、米国は50%弱となっています。このような違いは、国民性という視点も少なからずありますが、金融教育の差が影響している可能性は高いと考えられます。

 

日本にも投資商品はたくさんありますし、日本人が海外の投資商品に投資をすることも可能です。しかし、実際のところ、多くの個人資産を貯蓄し運用に回さないのは、預金以外の選択肢に関する知識がないことが最大の原因です。本来であれば、このサイトで金融教育を網羅することができればいいのですが、具体的なお金の増やし方に関する解説に注力していますので、ここでは浅く広く金融について学ぶ手段をひとつご紹介したいと思います。それは「ファイナンシャル・プランナー」です。ファイナンシャル・プランナーとは、私も所有している資格ですが、国家資格である「ファイナンシャル・プランニング技能士」という検定試験に合格した人が名乗る資格になります。1級から3級まであり、まずは3級から受けることになります。これをお勧めしたい理由は、特に3級に言えることなのですが、金融の基本が浅く広く学べる内容になっているからです。書店で各社からテキストが発売されていますし、動画学習コンテンツなどもありますので、3級だけでも是非学習し、試験を受けてみるとよいかと思います。

 

話を戻しますが、お金の増やし方には様々な方法があり、そのいずれの方法を選択するにしても、それぞれの基礎、メリット、デメリットを学び理解した上で取り組むことが重要です。当サイトでは、それぞれの方法の特徴を分析し、第三者目線から地に足ついたアドバイスができるよう心がけています。是非とも隅々までお読みいただき、ご自身の性格、資産、人生設計に合ったお金の増やし方を探していただければと思います。

<参考文献>

・学校段階における金融リテラシー教育のあり方について, H28 >外部リンク

・日本銀行調査統計局, 資金循環の日米欧比較 >外部リンク

・日本の金融教育は欧米に比べ遅れているのが現状。

・金融について浅く広く学ぶことをお勧め。

・お金の増やし方には様々な方法があり、そのいずれの方法を選択するにしても、それぞれの基礎、メリット、デメリットを学び理解した上で取り組むことが重要。