不動産投資

不動産投資はやるべきかやらないべきか


不動産投資について考えるにあたり、まず、投資の原則を改めて見直してみます。投資を行う上での大原則は、余剰資金で行うということです。これはどのような投資においても同じで、不動産だけ特別扱いできる理由は何もありません。それでは、なぜローンを組んでまで不動産投資をするのでしょうか。つまり、借金をして投資を行っているということになります。銀行から借金をして、そのお金で株を買いますか?それと同じことなのです。マイホームを購入する際にローンを組むことは非常に一般的ですが、マイホームの購入と不動産投資は、その目的、性質が、全く異なります。マイホームの購入について検討する際は、賃貸と比較して家計の収支バランスを考えることになるかと思いますが、不動産投資は、他の投資案件と比較してリスクを考えるべきです。この点を、不動産投資の前提として考えるようにしましょう。

 

また、マイホーム購入と不動産投資について説明しましたが、両方に共通して多くの人が誤解している注意すべきポイントがあります。それは、ローンを組んで不動産を購入した時点で、その不動産が完全に自分のものになったと思われている方が多いのですが、そうではないということです。念願のマイホームを手に入れたというような話を耳にしますが、ローンを組んでいるのであれば、まだ手に入れたとは言えません。登記簿を実際にご覧になったことがありますでしょうか。登記簿には「権利部(乙区)」という欄があるのですが、そこには、「抵当権」に関する記載があります。ここには、ローンを組んでいる金融機関の名前などが書かれており、ローンを完済するまでは、返済が滞った場合などに金融機関がこの物件を競売にかけることができます。返済が完了すると、抵当権は抹消されますが、借入金が1円でも残っているとこの抵当権は有効ですので、完済までは差し押さえられているような状態にあります。つまり、ローンを組んで不動産を手に入れたと思っても、厳密にはローンを払い終わるまではそうではないのです。

 

このように考えると、不動産投資におけるリスクも見えてくるかと思いますが、不動産投資は大きな金額を動かす「投資」になりますので、借金をしてまで行うリスクは非常に高いと言えます。不動産投資は、他の投資やビジネスなどで資金を十分に増やしてからの次のステップと考えるのがよいでしょう。不動産を一括購入するための資金が準備できてから行うのが、最も望ましいやり方です。ローンを組んだ上で、損益ギリギリのラインで利回りを考えている時点で、高い確率で失敗します。

 

ローンを組み、損益ラインを計算しながら不動産投資を検討してしまう人が多くいる現状を作り出してしまっているのは、「家賃保証」という制度です。不動産管理会社などが、毎月一定額の家賃を必ず支払ってくれるという制度です。これは、空室リスクや滞納リスクがないというのが最大のメリットで、オーナーにとっては非常にありがたく人気があります。しかし、そこには注意すべき大きな落とし穴があります。家賃保証の金額とローン返済の金額を天秤にかけて損益ラインの計算をするのですが、家賃保証があるからと言って机上の計算通りにはならないのです。35年ローンを組んだと仮定して、35年先までその家賃保証がその金額のまま継続され、かつその不動産管理会社が存続している場合にのみ机上の計算通りになります。しかし、実際は、ほとんどの場合その通りにはなりません。家賃保証の最大の落とし穴なのですが、家賃保証の保証金額には見直しが入るのです。つまり減額される可能性があるということです。年度ごとに見直しが入りますので、不動産の資産価値が落ちれば、毎年毎年保証金額が減っていくという可能性も十分にあり得ます。ですので、少なくとも最低保証金額の設定は必須になりますが、いずれにしても、35年ローンを組んだとして35年間全く同じ家賃保証が続くということはまずあり得ないのです。

 

また、十分な資金が準備できていないにも関わらず不動産投資を検討してしまう人が多くいるもう一つの理由として、サラリーマンはローンがおりやすいという事実があることです。不動産投資はサラリーマンの特権である、という考え方があるのです。ローンがおりやすいことは事実ですが、だからと言って、安易に長期のローンを組んでまで巨額の投資を行うのには、あまりにリスクが大き過ぎます。もちろん、ハイリスクハイリターンですので、リターンを期待してそれを受け入れるという考え方もありますが、このサイトではリスクを極限まで抑えることを重視していますので、その視点においてはリスクが大きいと言えます。

 

 ちなみに、ローンがおりやすい条件とは何かについて、少し触れておきます。サラリーマンはローンがおりやすいと言いましたが、具体的には、銀行は以下のようなポイントで個人を評価し、判断しています。

・年収(400万円が分岐点)

・何年勤めているか(3年が分岐点)

・どんな仕事をしているか(大手企業ほど有利)

・借金の有無

どんな仕事をしているかについて、大手企業ほど有利と書きましたが、最も不利なのは自営業です。過去3年分の確定申告の内容を見て判断しますので、安定したビジネスモデルで安定した十分な収入が過去3年に渡って継続していることが最低条件となり、ハードルはかなり高いと言えます。大手企業でなく、中小企業に勤めている場合でも、自営業に比べればはるかに有利ですので、サラリーマンはローンがおりやすいと言えるのです。

 

このように、家賃保証制度やローンの仕組みについて十分な知識を得る前に、高いリスクを背負ってまで不動産投資に踏み切ってしまう人が多いため、ぜひとも慎重に考えることをお勧めします。

 

一方で、余剰資金が豊富にあり一括購入が可能な場合や、他の投資やビジネスで資金が安定して回っている場合は、物件選定をしっかりと行うことを前提に、不動産投資はお勧めできる投資方法であると言えます。例えば、他の投資で毎月100万円の収入が安定して入っている状態で、毎月20万円支払いのローンを組んで不動産投資を行う、これなら健全な資金回りと言えます。このような資金回りができるのであれば、不動産投資にチャレンジする価値は十分にあると思いますので、その場合に極めて重要になる物件選定のポイントについて少し解説したいと思います。物件選定における最も重要なポイントは、「資産価値が落ちないこと」です。極端な話、このポイントさえしっかりと押さえられていれば、まず損することはありません。ですので、徹底的にこの視点にこだわって物件選定をしていただきたいと思います。

 

資産価値が落ちない物件の条件としては、「都心の駅徒歩10分以内」という条件がまず挙げられます。当然ですが、駅からは近ければ近いほどよいです。駅から近いということは、資産価値が落ちない最も重要な要件ですので、強く意識してください。駅前であれば、古くなったボロボロのビルでも、資産価値はほとんど落ちていないという事実があります。35年ローンを組むのであれば、築35年になっても資産価値が落ちないことを考えなければいけません。それが考えられない場合は、ローンを組む年数を短くするという方法もありますが、逆に、20年程度所有したら売却することを前提にプランを組むのも得策です。35年ローンを組んだ場合、20年程度で残債は約半分になっているのが一般的ですので、20年後にいくらで売れるのかを考えてプランを組むとよいかと思います。いずれにしても、とにかく駅に近い物件であることを最優先に考えることが重要です。また、複数路線利用可能な駅であれば、更に望ましいと言えます。

 

余剰資金が豊富にある場合の物件選定のポイントについて少し解説しましたが、ほとんどの方の場合、余剰資金にそこまでの余裕はないのではないでしょうか。それでは、その場合は不動産は諦めた方がいいのでしょうか。不動産と一言で言っても、ランクは様々ですし、所有方法も様々で、それによって必要な資金も変わります。区分マンションアパート経営競売物件という順で、必要な資金は増えていくのが一般的です。おそらく、マンションの一室を所有するという区分マンションが、一般的にはじめに思い浮かぶ不動産投資かと思いますが、アパート一棟まるごと経営するといった方法もあります。当然、区分マンションが、不動産投資の中では必要資金が少ないと言えますが、更に低額から取り組める不動産投資も実はたくさんあります。ちなみに、区分マンションで不動産投資を行う場合、大規模マンションほど資金効率はよくなります。それは、大規模であるがゆえに、一戸あたりの管理費が安くなるためです。もし区分マンションを検討する際は参考にしてみてください。

 

話を戻して、低額から取り組める不動産投資についてです。まずはじめに挙げられるのは、「駐車場」です。狭い土地でも始められますし、上物(建築物)が必要ありませんので、必要な資金は大幅に削減できます。また、厳密には不動産投資のカテゴリーには入らないかもしれませんが、不動産投資に極めて近い投資モデルとして、「コインロッカー」や「自動販売機」などがあります。駅や街中にあるコインロッカーの所有者が、実は一般の投資家であることは多々あります。これらは、より少ない資金で始めることができますので、もし興味があれば調べてみるのもいいかと思います。ただし、必要な資金が少ない分、リターンもそこまで大きくはありませんので、十分に損益シミュレーションをすることをお勧めします。

 

不動産投資は頭金として300〜400万円用意するのが望ましいと一般には言われますが、これくらいの金額が用意できたからと言って、十分な検討を経ずに投資を行うのには大きなリスクが伴います。不動産投資という投資の性質、そしてそれを取り巻く様々な制度、ご自身の余剰資金の状況など、各側面から十分に検討した上で、リスクを極限まで抑えた投資判断をしていただければ思います。

投資の大原則=余剰資金で行う

不動産投資も例外ではない

ローンを組んでまで投資をするのはリスクが大きい

ローンを完済するまでは不動産は完全には自分の物ではない(抵当権)

ローンを組んで不動産投資をする理由

・家賃保証→年度ごとに見直しが入る

・サラリーマンはローンがおりやすい→ローンを組む理由にならない

 

不動産投資を行う価値のあるケース

・余剰資金が豊富にあり一括購入が可能な場合

・他の投資やビジネスで資金が安定して回っている場合

物件選定の最重要ポイント

=資産価値が落ちないこと

=都心の駅徒歩10分以内

 近ければ近いほどよい

 複数路線利用可能駅は更によい

 

資金が十分にない場合の不動産投資に近い投資モデル

・駐車場

・コインロッカー

・自動販売機 など