飲食店経営①〜利益拡大戦略〜

今日からできる飲食店の利益を増やす最も簡単な方法


飲食店を経営していく上で、最も頭を悩ませるのが利益拡大戦略です。利益とは、売上から経費を差し引いたものですので、利益を上げるための戦略としては、売上を上げる方法と、経費を下げる方法の2つに分けられます。さらに、売上を上げる方法は、客単価を上げる方法と、回転数を増やす方法に分けられます。回転数を増やすためには、当然ながら客数を増やす必要があります。経費を下げる方法は、様々な経費が考えられるため、単純にいくつかの方法に分類することは難しいのですが、主なところでは、原価率を下げる、人件費を下げる、家賃や光熱費を下げるなどが挙げられます。このように、飲食店の利益拡大戦略を立てる上では、漠然と「どうしたらお客様が増えるだろう」と考えるのではなく、手段をしっかりと分類し、それぞれの方法を別々のものとして考えていく必要があります。そこで、まずこの記事では、客単価を上げる最も簡単な方法について解説していきたいと思います。

 

客単価が高い飲食店というと、どのようなイメージを持ちますでしょうか。おそらく、高級路線の店舗が思い浮かぶかと思います。高級フレンチレストラン、高級懐石料理店、高級寿司店、高級バーなどです。もちろん間違いではありませんが、私がお伝えしたいのは、高級路線の店舗に変えるということではなく、現在経営している飲食店の基本コンセプトは一切変更せず、メニューを少し工夫するだけで、客単価を上げることが可能だということです。

 

その答えは、「松竹梅戦略」です。例えば、定食屋さんを経営していて、とんかつ定食メニューに、1000円の「とんかつ定食」と1500円の「上ロースかつ定食」があるとします。このお店のターゲット層にもよりますが、おそらく1000円の「とんかつ定食」の方が、数量としては多く売れる可能性が高いと思われます。これは、2者択一の場合、コスト意識から安い方を選びたくなるという顧客心理によるものです。そこで、ここにもうひとつ単価の高いメニューを加えてみます。例えば、2000円の「極上霜降りロースかつ定食」を加えて、3つのメニュー展開にします。実はそれだけで、1500円の「上ロースかつ定食」の注文が大幅にアップします。これは、3者から選択する場合、真ん中のものを選びたくなるという顧客心理によるもので、この傾向はかなり顕著に表れます。このことを、行動経済学では「極端回避性」と呼びます。ちなみに、2番目に売れるのは1000円の「とんかつ定食」、3番目に売れるのは2000円の「極上霜降りロースかつ定食」になりますが、3番目とは言え「極上霜降りロースかつ定食」も一定量売れますので、客単価アップに意外と効果があります。これにより、2メニュー展開では1000円のメニューが多く売れていたにも関わらず、3メニュー展開にするだけで、1500円のメニューが多く売れるようになり、これだけで客単価は1.5倍です。もちろん飲食店の売り上げには様々な要素がありますので、単純計算通りにはいかない場合も多々ありますが、単価の高いメニューを加えることで、既存メニューの購買順位が劇的に変化します。これが「松竹梅戦略」なのです。このように、たったひとつメニューを加えるだけで、客単価を上げることができますので、ぜひとも利益拡大戦略のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。

 

集客のため、売り上げアップのために、新メニュー開発に取り組まれている飲食店が多く存在します。ここで例に挙げた定食屋さんであれば、ハンバーグ定食、カレーライス、ラーメン、餃子定食などを新メニューとして考えるかもしれません。しかし、これらがもしこのお店で扱ったことのない新しいメニューなのであれば、安易に手を出すのはリスクが大きくお勧めできません。なぜなら、原材料の種類が増える、新たな調理器具が必要となる、調理効率が低下するなどのデメリットが多く存在するためです。当サイトでは、リスクを極限まで抑えた方法をお勧めしたいと考えています。もちろん、新メニューの開発自体を否定するつもりは全くありませんが、今すぐに客単価を上げたいという明確な目的があるのであれば、全くの新メニューを加えるのではなく、既存メニューの延長線上にある高単価メニューを加えることを強くお勧めします。リスクが少なく、効果が目に見えて表れます。

 

松竹梅戦略を仕掛けるメニューについては、当然ですが、人気のあるメニューを軸に展開すると非常に効果的です。ここで取り上げた定食屋さんの例では、「とんかつ定食」が人気で売れているということが大前提になります。もし「とんかつ定食」よりも「エビフライ定食」の方が売れているのであれば、「エビフライ定食」を軸に松竹梅戦略を仕掛けるべきです。この点をしっかりと押さえなければ、松竹梅戦略を仕掛けても、結局どれも売れないという結果になりますので、注意するようにしてください。松竹梅戦略は、極めてシンプルな考え方でありながら、実は人の心理を的確に捉えた非常に効果的な方法です。今すぐできる、比較的手のつけやすい戦略かと思いますので、ぜひともチャレンジしていただき、利益を拡大されることを願っています。

 

ちなみに、客単価を上げること以前に、そもそも人気メニューがない、そもそもお客様が来ないという悩みを抱えている場合は、また別の方法を考える必要がありますので、それらについて解説した記事をぜひお読みください。

飲食店の利益拡大戦略

・売上を上げる→客単価を上げる、回転数を増やす

・経費を下げる

 

客単価を上げる最も簡単な方法=「松竹梅戦略」

単価の高いメニューを加えて3メニュー展開にする

真ん中のものを選ぶ顧客心理「極端回避性」

・既存メニューの延長線上で展開する

・人気メニューを軸に展開する