飲食店経営③〜集客〜

美味しいだけでは繁盛しない本当の理由と効果的な秘策


最高の料理を提供しているはずなのに繁盛しないという悩みを抱える方のために飲食店の集客について解説するにあたり、まずはじめにお伝えしたいことがあります。私は、「運営者情報」のページにも記載した通り長年に渡り王手メーカーで商品開発、技術開発の仕事に携わってきましたが、その長年に渡る経験の中で非常にショックに感じたことがあります。それは、どんなに優れた素晴らしい商品を作っても、それだけでは売れないということです。技術者として、優れた商品を開発することが自分の腕を示す全てですし、そこにプライドもあります。しかし、それだけでは売れないのです。その反面、テレビCMを打つと、それだけで売り上げが何倍にも跳ね上がります。この現実に直面し、自分の技術力を注いで商品開発することの意義を見失いかけたこともあります。商品の品質などどうでもいいのではないか、そう思ったこともありましたが、その時、とても重要で本質的なことに気づきました。実は、商品そのものの品質は、リピートに大きく影響してくるということです。

 

トライアルとリピートについて、考えたことがありますでしょうか。トライアルというのは、初めてその商品を買っていただくお客様のこと、リピートというのは、文字通り繰り返し何度も同じ商品を買っていただくお客様のことです。商品開発を例に取ると、品質の高い優れた商品を開発することは、リピートに大きく繋がります。一方で、テレビCMで宣伝をすることは、トライアルに直接繋がります。非常に品質の高い新商品を発売しても、新商品ですので誰もその商品のことを知りません。つまり、誰もその商品の品質が高いことを知りません。ですから、商品の品質が高いから買うという購買行動には繋がらないのです。これが、品質が高くても売れない理論です。テレビCMの場合、買ってみたい、試してみたいという購買意欲を掻き立てる構成に作られていますので、仮にその商品の品質が悪かったとしても(仮の話です)、CMの誘いにつられて買ってしまうのです。もちろん品質が悪ければ、CMの誘いで購入したとしても、リピートすることはありません。このように、購買のサイクルというのは、まずトライアルを獲得するための策を講じ、試しに購入していただいたお客様が実体験としてその商品の高い品質に満足し、また買いたいという気持ちになり、リピートに繋がる、あるいは他の人に勧める、このような流れになります。

 

この記事をお読みの飲食店経営者の方の中には、このような私の思いに共感していただける方もいるのではないでしょうか。なぜなら、商品開発も、飲食店経営も、同じ要素を持ち合わせているからです。飲食店を経営されている方の多くは、調理の腕に自信を持っていたり、食材を選定する目に自信を持っていたり、メニューの創造性に自信を持っていたりと、職人気質の方が大多数です。世界一の腕をふるっているのだから絶対に売れるはず、世界一美味しい料理を作っているのだから絶対に売れるはず、世界一のサービスを提供しているのだから絶対に売れるはず、そう思っている方も多いのではないかと思います。しかし、現実はそう簡単ではありません。職人魂には納得しがたい部分かと思いますが、それが現実です。その世界一美味しい料理は、食べてみないとわからないのです。つまり、自信を持っている料理の味、創造性、サービス、いずれも実際に来店して食べていただかないとわからないことなのです。

 

トライアルとリピートに分けて考えた場合、これらは全て、リピートに大きく影響してきます。食べてみて初めて「美味しいからまた来よう」と思うのです。その世界一の料理とサービスがあれば、リピート率をいくらでも高めることができます。ですから、集客のためにまず考えなくてはいけないのは、いかにしてトライアルを増やすかということです。トライアルとリピートは、はっきりと区別して、割り切って考えなくてはいけません。リピートは職人魂トライアルは商人魂を必要とします。商人魂は、ドライで、したたかでなければいけません。確かな腕があり、間違いなく料理は美味しいのに、客数が伸びない。このような場合、必要なのはしたたかなトライアル戦略です。

 

それでは、どのようにしたたかな戦略を立てればいいのかについて、特に有効と考えられる具体的な3つの方法を解説したいと思います。もちろん、テレビCMを打つことができれば、劇的な効果が期待できますが、莫大なコストがかかります。大規模チェーン店であれば選択肢に入るのかもしれませんが、個人経営ではなかなか困難です。このサイトでは、リスクを極限まで抑えることを重視していますので、コストのかからない方法に限定して、解説していきます。

 

早速ですが、特に有効なトライアル戦略とは、この3つです。

①フォトジェニックメニュー戦略 

②メディア戦略

③プレスリリース戦略

 

それではひとつずつ解説してきます。まず1つ目のフォトジェニックメニュー戦略ですが、写真映えするメニューを開発するという方法です。メニュー開発という言葉を使ってしまいましたが、本来お客様に提供したいと思っている本命のメニューとは全く異なり、思わず写真に撮りたくなるような、見栄え最優先のメニューです。これが、いわゆるCMの役割を果たします。繰り返しになりますが、本来提供したい本命のメニューとは完全に切り離して考えてください。例えば、高さが50センチくらいある「巨大ロングパフェ」や、直径が10センチくらいしかない「ミニひとくちピザ」など、思わず写真を撮りたくなるようなメニューです。それにより、SNSの拡散なども期待でき、新たなトライアルを次々と獲得できるようになります。CMの代わりに、勝手に宣伝してくれるというイメージです。

 

続いて2つ目のメディア戦略ですが、イベント的要素のある仕掛けを仕込むという方法です。メディア受けするような、つまりメディアが好きそうな仕掛けを仕込むことで、メディアが自ら取材に来てくれるのです。過去の成功事例としては、「旬熟成」という熟成肉専門の飲食店があるのですが、目隠しをして熟成肉を味わうという斬新な企画を打ち出しました。これにメディア各社は飛びつき、テレビ、雑誌など、様々なところで取り上げられ、絶大なトライアル効果を発揮しました。実はこれ、「旬熟成」というお店のオーナーが、メディア受けを狙って意図的に仕掛けた企画だったのです。見事に成功して大量のトライアルを獲得し、もちろん本命の熟成肉料理は最高品質ですので、一度食べたお客様はリピートしてくれるというサイクルが生まれました。ここで覚えておいていただきたいのですが、メディアは取り上げるネタに飢えています。テレビでも雑誌でも同じです。毎日24時間テレビ番組が流れていて、毎週大量の新刊雑誌が書店に並びます。これだけの情報社会ですので、取り上げるネタ探しに必死です。そこに対して、取り上げやすいネタを提供してあげるというイメージです。

 

余談ですが、私はセミナープロデュースの仕事もしていまして、以前、少し変わったセミナーをプロデュースしたことがあるのですが、ネット上で参加者の募集をしたところ、テレビ朝日から取材の申し込みがありました。このように、企画の内容次第では、メディアはすぐに取り上げてくれます。

 

最後に3つ目のプレスリリース戦略です。これは、さきほどのメディア戦略をもう少し積極的に仕掛ける手段になります。メディア戦略は、メディア受けする仕掛けを作り取材が来るのを待つという、いわゆる待ちの戦略でしたが、プレスリリース戦略はこちらから売り込むという攻めの戦略です。フォトジェニックメニュー戦略で紹介したインパクトのあるメニューでもいいですし、メディア戦略で紹介したイベント的要素のある仕掛けでもいいですし、本命商品に関連した斬新なメニューでもいいかと思いますので、それをプレスリリースするのです。本命商品に関連した斬新なメニューというのは、例えば、ラーメン店であれば、ズワイガニが丸ごと1個乗ったラーメンとか、麺が全く見えないくらい表面にとろろが乗った「ホワイトラーメン」などです。このようなメニューや企画を「新発売」という形でメディアに対してプレスリリースするのです。これがメディアの目にとまると、取材に来てくれるようになります。当然ですが、さきほどのメディア戦略と同じで、メディア受けしやすいメニューや企画であるほど、取り上げられる可能性は高まります。プレスリリースをする方法も、意外と簡単です。具体的な方法の説明はこちらの記事では割愛しますが、無料のテンプレートなども多くネット上にありますので、「プレスリリース 無料」や「プレスリリース テンプレート」などと検索し参考にしてみるとよいかと思います。

 

以上、有効な3つのトライアル戦略について解説してきましたが、いずれの方法もコストをほとんどかけずに取り組むとこができますので、ぜひチャレンジしてみるとよいかと思います。せっかく質の高い料理を提供しているにもかかわらず、トライアルを獲得できないがために経営に悩むのは非常に勿体ないことだと考えています。本物の質の高い料理を多くのお客様に味わっていただくためにも、トライアルとリピートを切り離して考え、まずはトライアル戦略に着手してみてはいかがでしょうか。

トライアルとリピート

・料理やサービスの品質→リピートに影響

・集客のためにはまずはトライアルが必要

 

有効な3つのトライアル戦略

①フォトジェニックメニュー戦略 

写真映えするメニューを開発

メニュー自体が広告塔となる

②メディア戦略

イベント的要素のある仕掛けを仕込む

メディアに対する待ちの戦略

③プレスリリース戦略

メニューや企画を品発売としてプレスリリース

メディア戦略を積極的に仕掛ける攻めの手段