FX②

自動売買で安定して勝ち続けるための確率論戦略


FX(外国為替証拠金取引)は、通貨間の為替相場の変動を利用して利益をあげていく投資商品です。FXの取引手法には、主に「裁量トレード」「自動売買(EA)」「ファンド」の3種類が存在し、裁量トレードと自動売買(EA)は、特に高度なスキルが必要とされます。裁量トレードに裁量スキルが必要なのは当然ですが、EAにも高度な裁量判断が必要であることを、別の記事で解説しました。そちらの記事をまだ読まれていない場合は、ぜひ先にそちらを理解することをお勧めします。

>FXの種類とEAの特性について知る

 

EAを用いたトレード手法の中でも、自らのハンドリングを必要とせず、自動で利益をあげ続けられる方法として、「EAのハンドリングをプロに任せる」「EAを使用するファンドに投資する」「確率論のみで考える」があり、中でも信用リスクを伴わない手法が「確率論のみで考える」というものです。過去の相場におけるEAのパフォーマンスを数多く検証し、利益があげられる確率を求め、利益になるEA、利益になる条件を見つけていく手法です。その検証、計算が、シンプルにできるものほど、未来においてもその確率に収束する可能性が高いと考えられ、極めて合理的でリスクを抑えた運用と言えます。それでは、具体的にどのような方法で、確率論のみで利益を生み出すことがきるのかについて、説明していきたいと思います。

 

EAを選定する際に着目すべき点は多くあるのですが、特に重要な項目としては、勝率損益比最大ドローダウンの3つが挙げられます。勝率というのは単純で、全てのトレードの中で、利益をあげられたトレードの割合のことです。これは、金額やpipsではなく、トレード回数としての勝率です。損益比というのは、金額またはpipsとして、勝ちトレードにおける平均獲得pipsと、負けトレードにおける平均損失pipsの比率のことを指します。pipsとは、FXでは様々な通貨が用いられ、米ドル、ユーロ、日本円のように、異なる通貨間のトレードにより取引した金額を比較する際に、通貨単位が異なると比較が困難なため、便宜的に統一の金額単位として用いられるものです。勝率が50%で、損益比が1:1であれば、資金は増えもせず減りもしません。勝率が75%で、損益比が3:1(3が損失、1が利益)の場合も、資金は横ばいですし、勝率が25%で、損益比が1:3の場合も、やはり資金は横ばいです。これらの数字をベースに、勝率を上げるか、もしくは損益比における利益の割合を上げられれば、資金は増えていくということになります。このように、勝率と損益比が決まれば、資金が増えるか減るかが決まります。そのため、将来的に資金は増えるのか、破産に向かうのかというのが、おおよそ予測することができるのです。これを統計学的に計算し、一覧表としてまとめたものが「バルサラの破産確率表」と呼ばれるもので、数学者であるナウザー・バルサラ氏が考案したものです。非常に有名なものですので、興味があれば検索してみると良いかと思います。理論的に計算ができるという意味で、参考程度に捉えてください。

 

そして、最大ドローダウンというのは、一度の負けトレードで最も大きく損失を出した時の、証拠金に対する損失額の割合のことを指します。勝率と損益比でほぼ未来が計算できるという説明をしましたが、実際に運用する場合、実はこの最大ドローダウンが極めて重要で破産に直結します。FXというのは、外国為替証拠金取引と呼ばれるように、証拠金をFX業者に預け、それを担保にして、レバレッジを効かせた大きな金額の取引を行います。取引を行い、ポジションを持っている間は、相場の動きに応じて、含み益や含み損が生じており、決済して初めてその利益または損失が確定します。しかし、含み損があまりにも大きくなりすぎると、証拠金不足の状態となり、強制的に決済されてしまいます。これを、強制ロスカットと呼びます。どの程度まで資金が減った時点で強制決済となるかは、FX業者にもよりますし、トレーダーの設定にもよります。資金がゼロになった時点で決済される設定の場合、含み損が増して強制決済になった時点で、全ての資金を失うことになります。また、相場が急激に動いた場合、設定された価格で約定できないスリページと呼ばれる現象が起こることもあります。そして、実際に約定された価格が、さらに悪い条件になっていれば、残高がマイナスとなり、追加資金の振込を請求される場合もあります。これを、追証と言います。従って、勝率と損益比だけでなく、最大ドローダウンがどの程度の大きさで、どのくらいの頻度で起こるのかを把握することは、極めて重要です。

 

このように、勝率、損益比、最大ドローダウンの3つの数値をもとに計算をすることで、どのように資金が推移していくかを推測することができるのですが、当然ながら相場は生き物ですので、その通りになるとは限りません。そのため、その通りにならない可能性を極力排除し、可能な限りシンプルに計算できるような戦略を立てる必要があります。勝率60%、損益比1:1、最大ドローダウン30%の場合、30%資金が減ったとしても強制ロスカットに合わない金額の証拠金およびロット数で運用をすれば、理論上は資金は増え続けますが、正直これでは私はリスクが非常に高いと判断します。過去相場に当てはめた結果、つまりバックテストの結果がこのような成績なのであって、相場は変化しますので、未来においてその通りになる保証は全くないからです。そして、これではリスクが高いと考える理由は、あまりにも変動要素が多いため、予測が難しいからです。従って、先ほど説明した戦略というのが、いかにシンプルな計算をもとに立てられるように変動要素を絞り込めるかが重要なのです。

 

なかなか具体的なイメージが湧きにくいかと思いますので、具体例を挙げて説明したいと思います。しっかりと検証をして組み立てれば、極めて有用な手法になりますので、丁寧に説明していきます。

 

まず、勝率ですが、100%のEAを選びます。勝率が100%であれば、損失が全くないわけですから、損益比の概念は必要ありません。そのため、最大ドローダウンのみを考えればよくなるため、変動要素を大幅に絞り込むことができます。この考え方をベースにしますが、そもそも勝率100%のEAなど存在するのでしょうか。詳しい方はすぐにわかるかと思いますが、世の中にはこのようなEAはいくらでも存在します。それは、ナンピンという手法を用いたEAです。ナンピンとは、例えば、買いポジションを取得したにも関わらず、意に反して相場が下落したとしましょう。すぐに相場が上昇に転じればよいのですが、さらに下落を続けた場合、最初の買いポジションより大きい額の買いポジションを追加で取得します。そして、そこから上昇に転じれば、最初の買いポジションよりも低い価格であっても、後から取得した大きい額の買いポジションで大きな利益が得られてトータルでプラスになるため、その時点で2つのポジションを同時に決済します。これで、この一連のトレードは完結し、勝ちトレードということになります。追加でポジションを取得した後も、さらに下落を続けた場合、さらに大きい額で3度目の追加を行います。永遠に下げ続ける相場などありませんので、これをひたすら続けることで、理論上絶対に負けません。これがナンピンと呼ばれる手法です。これで勝率100%が実現するのですが、重要なのは、トレードの途中で大きな含み損を抱えるということです。先ほど説明したドローダウンは、あくまでも決済時のドローダウンしか数字上には出てきませんが、含みドローダウンを考えることが大切です。含みドローダウンが資金に対して100%となった時点で、強制決済によりはじめて負けトレードになってしまいます。そうであるならば、もう少し証拠金を多く入れておけば、負けずに延命することができます。そこの駆け引き次第、つまり証拠金やロット数を、含みドローダウンの大きさに合わせて調整することで、いくらでもバックテストにおいて100%の勝率を出すEAを作成することは可能なのです。ただし、いずれは含みドローダウンが強制ロスカットに引っかかり、破産となる日が必ず訪れます。そのため、このようなEAはあまりにもリスクが高く、使用を避けるトレーダーが多くいるのです。

 

参考までに、ナンピンを使用したEAのバックテストのグラフを2つほど例示します。あくまでもグラフイメージの例として挙げていますので、具体的なEAのパフォーマンスの詳細については無視します。口座残高と、有効証拠金の推移を示していますが、残高が直線状に右肩上がりであり、ところどころで有効証拠金が一時的に落ち込む部分が確認できます。この有効証拠金が一時的に極端に減っている部分が、含みドローダウンです。落ち込みが深いほど、証拠金に対するドローダウン額の割合は大きくなります。取引するロット数を上げれば、口座残高が上昇する速度は速くなり、同時に含みドローダウンの深さは深くなります

 

GogoJungle(https://fx-on.com)より引用

 

ここまでの説明で、勝率100%のEAの仕組みとリスクについては理解できたかと思います。そこで、このような特徴のEAを用いて、いかにシンプルな計算で戦略を立てていくかを解説していきます。まず、着目すべき点は、どのくらいの頻度で、どのくらいの含みドローダウンが起こるのかということです。これも、あくまでもバックテストにおける結果で見るしかないため、未来のことはわからないのですが、明らかに見るべきパラメーターが少ないので、解析はしやすいはずです。例えば、過去10年のバックテストの結果、2年に1回、50%の含みドローダウンがあるというEAがあったとしましょう。もしこのようなEAであれば、相場状況がある程度変化したとしても、さすがに1年で6回以上50%の含みドローダウンが起こることは考えにくいでしょう。これはあくまでも予想でしかありませんが、確率論として考えます。統計学的な確率の計算について解説をすると非常に長くなってしまいますので割愛しますが、1年に6回以上50%の含みドローダウンが今後起こる確率が極めて低い計算結果になることは、感覚的にもイメージできるのではないでしょうか。そして、重要なのは、50%の含みドローダウンに耐え得る証拠金とロット数で運用するのではなく、50%の含みドローダウンになったら、強制ロスカット、つまり破産するような証拠金とロット数であえて運用するのです。これで、バックテスト通りであれば、2年に1回破産します。そして、このような勝率100%のEAは、リスクが高い分、たいていの場合、速いスピードで利益が積み上がり資金が増えていきます。その時、資金が2倍になるまでに要する期間と、破産する頻度を比べて、どちらが早く訪れるかを計算するのです。2年に1回破産しますが、1ヶ月で2倍になるような設定が計算上可能なEAなのであれば、極めて優位性があると言えます。なぜ優位性があるかと言うと、資金が2倍になった時点で、増えた分の資金を口座から抜くのです。その後、また2倍になれば、また抜きます。そして強制ロスカットがやがて訪れればその時は口座がゼロになります。このように、2倍になるスピートと、強制ロスカットが訪れる頻度だけを見ればいいのです。この場合で計算すると、1年に6回の強制ロスカットが訪れる最悪の相場になったとしても、資産は横ばいですので、極めて安全です。1年のうち、6ヶ月は強制ロスカットでゼロになり、残りの6ヶ月は一月あたり2倍になるわけですから、ゼロと2倍が6ヶ月ずつで増えもせず減りもせずということです。ですので、2倍になったら必ず増えた分の資金を口座から抜くことを徹底することで、リスクが高いとされるEAを使いこなすことができます。

 

このような手法で資金を増やしていくことは可能ですが、さらにリスクを分散するためには、このような条件に当てはまるEAをたくさん探し出すことです。そして、それぞれのEAを別々の口座で動かすのです。10種類のEAを探し出すことができたのであれば、FX口座を10個開設し、例えば10万円ずつ証拠金を入れ、それぞれのEAで運用します。それにより、リスクが分散され、10口座トータルで見た場合の1ヶ月ごとの損益が、常にプラスで運用できる可能性が高まります。例えば、ある月において、最悪の相場が訪れてしまい、4つの口座(4つのEA)で強制ロスカットに合ったとしても、残り6つのEAで資金が2倍になっていれば、ロスカットによる損失が40万円、資金2倍運用による利益が60万円で、トータルで20万円の利益ということになります。10口座分の100万円の元本に対し20万円の利益ですから、月利20%という極めて高いパフォーマンスを低リスクで実現できます。このように計算し、全体戦略を立てていくのです。

 

10種類のEAを10個の口座で1年間運用した場合のイメージを、例として以下の表に示します。DDとはドローダウンによる強制ロスカットを意味します。それぞれのEAの特徴は、強制ロスカットの発生する頻度と資金が2倍に増えるまでの期間を示しています。矢印で示した箇所は、資金が増加中で2倍までは到達していない期間です。このように、全体として毎月利益を積み上げていけると理想的ですので、イメージとして掴んでください。このシミュレーションでは、合計100万円の運用(1口座10万円)に対し、年間利益が300万円ですので、1年間で資金が4倍になったことになります。実際は、ここまで大幅に資金を増やすポートフォリオを組むことは難しいかと思いますが、低リスクで着実に資金が増えるような戦略を練るようにしてください。

 

 

最後に、もう一点だけ、絶対に注意しなくてはいけないポイントをお伝えします。それは、強制ロスカットになった際、さきほど説明したスリッページが起こり資金がマイナスになってしまうリスクについてです。資金がゼロになるのは想定していることですので全く問題ないのですが、これがマイナスになり追証が発生してしまうのは避けなくてはいけません。そこで活用したいのが、ゼロカット口座というものです。ゼロカット口座とは、万が一資金がマイナスになったとしても、追証は発生せず、ゼロに戻してくれるという口座です。これを活用すれば、安心してトレードすることができます。ゼロカット口座でなければ、この手法は絶対に使ってはいけませんので、必須事項として考えてください。このような都合のいいゼロカット口座ですが、実は海外のFX会社の多くが、この仕組みを採用しています。日本語対応で日本人も多く利用している代表的な会社で「XM」があります。この会社は、ゼロカット口座を採用していますし、複数口座を作ることができますので、この手法を行う上では非常に適しています。はじめて口座開設する際は、身分証明書の提出などの一定の手続きをネット上で行う必要がありますが、その後複数口座を増やしていく際は、マイページで即時開設できますので、非常に便利です。XM以外の会社でも全く問題ありませんが、この手法を行う上では特に適していると感じています。

 

以上のように、確率論のみで考えてEAを用いた運用戦略を立てることで、機械的に資金を増やし続けることが可能となります。勝率(ナンピンも含めたトレードセットごとの勝率)、損益比、最大ドローダウン(含みドローダウン)の3つのパラメーターに着目してEAを選定し、勝率100%のナンピン型EAで強制ロスカット頻度と資金が2倍になる頻度を天秤にかけて戦略を組めばいいのです。シンプルな確率論のみで考えられるところに落とし込むことが重要です。確率論上資金が増えていく計算になるのであれば、継続運用して回数を重ねていくことで、その確率に収束していきます。また、口座を分けて複数のEAを稼働し、トータルでの損益で考えることで、リスクが分散され、より安全に運用ができます。このサイトでは、リスクを極限まで抑えて、安定的に資産を増やし続けることに重点を置いて解説をしています。EAを使用してFXを行う場合は、入手したEAをただ稼働させるのではなく、確率論を重視して、リスクを分散し、安全な戦略を十分に練り上げた上で稼働させ、資金を増やしていただければと思います。

EA選定時の着目項目:勝率、損益比、最大ドローダウン

勝率と損益比が決まれば資金の増減が決まる

変動要素を絞るため「勝率100%のEA」(ナンピン型)を選ぶ

→最大ドローダウンのみを考えれば良い

 

資金が2倍になる期間と破産する頻度を比較

資金が2倍になった時点で増えた資金を口座から抜く

運用による資金2倍と強制ロスカットによる資金ゼロを繰り返す

→プラス運用となるよう調整する

 

複数EAを別々の口座で運用=リスク分散

ゼロカット口座で運用

→月あたりの運用がプラスになるよう調整する