社内評価

上司から評価されない人が評価されるための2つの秘策


社内評価と言うと、社内評価システム、つまり社内評価の仕組みや制度を思い浮かべる方が多いかと思いますが、契約件数や売り上げなどの数字だけで評価できる職種でない限りは、結局のところ上司による評価ということになります。要するに、どのような社内評価制度であれ、人が人を評価しているのです。そうである以上、明確な基準はありませんし、人による差も生まれてきます。以前の上司は自分のことを高く評価してくれていたのに、上司が変わったら評価されなくなったというようなことは、よくある話です。それでは、上司から評価されない人が、評価されるようになるにはどうしたらいいのでしょうか。また、どんな人が上司になったとしても、安定して評価され続けるためにはどうしたらいいのでしょうか。

 

上司から評価される人と評価されない人の違いについて、考えてみましょう。上司から評価されない人は、なぜ評価されないのでしょうか。その答えを求めようとする人が多くいるのですが、実は、上司から評価されない人には評価されない理由はないのです。一方で、上司から評価される人には評価される理由があります。ですので、評価されない理由を考えるのではなく、評価される理由を考え、その視点から戦略を立てていくことが必要です。上司も人間ですので、人の好き嫌いはありますし、人間的な合う合わないはあります。このような人間的な側面に解決策を見出すのは非常に難しいため、あまり深く考えない方がよいと言えます。上司に好かれようと思う必要は、全くありません。ドライに割り切って、仕事で成果を出すことだけに焦点を当て、そこに解決策を見出すのが得策です。それでは、仕事の成果において、どのような人を上司は評価するのでしょうか。それは、何か特定の事柄において圧倒的に他の人より優れているということです。多少優れているくらいでは意味がありません。周りの同僚と比べて、圧倒的に優れていることで、嫌でもそこに目が留まり、「こいつすごいな」と思われます。このように、特定の事柄において他者より圧倒的に優れることで「こいつすごいな」と思わせるということを、考え方の基本に置くことが重要です。これが大前提となります。

 

それでは、何において圧倒的に優れていればいいのかということになります。一般的な考え方としては、自分にできることを徹底的に伸ばして、他人よりも極端に突出させるということです。しかし、自分にそんな能力はないという方が多いのが実情です。人並みにはできても、特段得意なこともなく、他人と比べて圧倒的に突出できるようなことはない、という声をよく聞きます。そこで、誰にでもできる、評価されるために他人を圧倒しやすいポイントについて解説したいと思います。誰にでも他人より圧倒的に優れることが可能な方法としては、以下の2つの戦略があります。

・スピード戦略

・発想戦略

スピード戦略は、誰にでも今すぐに実践でき、今すぐに評価を上げられる方法です。発想戦略は、習得するまでに努力と時間を要しますが、習得してしまえば楽して高い評価を得続けられる方法です。現在の職場で、今後も長く働きながら、確実に高い評価を得続けようと考えるのであれば後者の発想戦略をお勧めしますし、短期的に高い評価を得ようと考えるのであれば前者のスピード戦略をお勧めします。それでは、これら2つの戦略について順に解説していきたいと思います。

 

(1)スピード戦略

上司が部下の仕事を評価するポイントは、質、量、スピードの3つにほぼ集約されます。つまり、質の良い仕事をするか、多くの仕事量をこなすか、仕事のスピードが速いか、この3つです。この中で、どれで勝負するかを考えます。質、量、スピードの3つは、独立しているように見えて、実は互いに深く影響し合っていますので、どれかを選ぶ上では、どれかを犠牲にする必要があるという考え方も持ちながら、優先順位として選んでいくことになります。

 

まず、質ですが、質で勝負できる人は一般的に優秀と言われることの多い人材で、おそらく既に高い評価を得ている人がこれに当てはまるかと思います。そのため、ここで今すぐに評価を上げるために質を選択するというのは、多少ハードルが高いように感じます。質というのは、はじめからすぐに高い水準に持っていくことは非常に難しく、量との関係性が重要になります。まずはじめはとにかく量をこなし、量だけを意識しているうちにその作業に慣れ、その結果、質を意識できるようになります。量質転換という言葉がありますが、まさにこのことです。量をこなした先に、はじめて質を高めることができるという、順序が非常に重要となります。そのため、もし質を高めたいと考えるのであれば、まずは徹底的に仕事量を増やすことだけを考えてください。量を増やすためには、短期間であれば詰め込んで仕事をするということになりますし、長期的に考えるのであれば経験を積んでベテランになるということになります。これはどちらでも問題ありませんが、いずれにしても、相当な苦労をするか、相当な時間をかけるかということですので、今すぐに評価を上げる手段にはなり得ません。短期間で仕事の質を上げられる人も周りにはいるかもしれませんが、それは残念ながら素質や能力がその仕事に向いているかどうか、すなわち適性に大きく左右されるため、そのような人とは比較をすること自体に意味がありませんので、気にする必要はありません。素直に、質という選択肢を外せばいいだけです。

 

次に量ですが、量は時間と正の相関を示します。さきほど、短期的に量を増やすためには、仕事を詰め込むことしか手段はないという説明をしましたが、その通りで、圧倒的な量の仕事を短期間でこなすことで、高い評価を得るという手段になります。短期間で仕事量を増やすためには、量は時間と正の相関を示しますので、残業を増やしてとにかく量をこなすのかということになります。しかし、今は残業をすること自体が評価される時代ではありません。特に、夜遅くまで残業することを悪く評価する社会になっています。また、夜遅くまで働くこと自体は評価されないどころか、他人との差別化にもつながりません。我々が若い頃はもっと夜遅くまで働いていたぞと上司から言われてしまっては、時代の違いとは言え、差別化どころではありません。そこで意外と有効なのが、早朝から仕事をすることです。朝早くから仕事をすることで他人との差別化がしやすくなり、評価されるケースがあります。実例も多く聞きますので、自分の職場がこのケースに当てはまる可能性があるのであれば、これもひとつの戦略として有効なのではないでしょうか。とは言え、そもそも残業を増やしてまで仕事を詰め込むこと自体、推奨することはできませんし、それにより健康を害してしまっては本末転倒ですので、状況に応じてご自身で判断していただければと思います。

 

最後にスピードですが、これが最もお勧めしたい選択肢です。仕事のスピードを、圧倒的に速くするということです。これは非常に有効で、多くの方の成功事例を聞いています。スピードは質と負の相関を示しますので、スピードを上げると質が落ちます。ここで重要なのが、徹底的にスピードを上げて、質は無視するということです。質を落としてスピードを上げることは誰にでもできますが、スピードを落として時間をじっくりとかけたからといって質をどこまで上げることができるでしょうか。もちろん、負の相関を示すわけですから、スピードを犠牲にすればある程度までは質を上げることができます。しかし、ここで重要なのは、ある程度ではなく、圧倒的に他人より優れなければなりません。圧倒的に質の高い仕事をすることは、誰にでもできることでしょうか。そうではありません。さきほども説明した通り、これは、能力、素質などの適性が影響してきてしまうのです。つまり、誰にでもできることではないのです。そうであるならば、質ではなくスピードを優先すべきなのです。スピードであれば、質を犠牲にすればするほど、誰にでも圧倒的に上げることができるのです。

 

例えば、ある資料を1ヶ月後までに作成するよう上司から言われたとしましょう。ここで、質を完全に無視して、スピードで勝負します。一発合格は初めから狙わず、ラフ案レベルの書類を1週間で作成し、上司に提出します。質は低くて構いませんが、作りかけではなく、最後まで一応形になっていることが重要です。もちろん完成度の低い内容ですので、多くの指摘を受けるでしょう。しかし、それでいいのです。まず、1ヶ月後までに作成しなくてはならない資料が、質が低いとは言え、わずか1週間で形になっているわけですから、上司は「こいつ速いな」と感じるはずです。一方で、質が低いことに対する悪い評価も受けますが、圧倒的なスピードの速さによって、質の低さによる低評価より、スピードの速さによる高評価の方が勝るのです。それくらいのインパクトがあります。そして、1週間で作成した資料に対して、多くの指摘を受けるわけですが、ラフ案レベルの段階で上司の指摘を受けられることが大きなポイントになります。つまり、この早い段階で、上司の意向が具体的にわかるのです。もっとこうして欲しいとか、このような内容を盛り込んで欲しいとか、上司のイメージする完成版の資料イメージを、具体的に得ることができます。そのため、大幅修正による時間のロスも削減できます。そして、上司の指摘に基づき、少し完成度を高めた資料を、2日後くらいに再び提出します。最初に提出した資料と比べて、明らかに上司の意向に沿った内容に変わっていますので、質は低くても、大きく進展しているように上司は感じます。たった2日間でこんなに進んだという、圧倒的な仕事スピードであるかのような錯覚を覚えます。ここまでくると、さらに具体的な指摘を受けることができます。あとは、指摘を受けた通りに修正を加え、自分なりの質、自分なりの完成度に仕上げて、また2日後に提出します。ほぼ上司の意向通りの資料が出来上がっていますので、質は低かったとしても、ある程度は目をつぶり、合格をもらうことができます。1ヶ月後までに作成するように言われた資料が、トータルで2週間弱という圧倒的な短期間で仕上がったということになります。資料の質は低くても内容自体は上司の意向通り、そして圧倒的なスピード、これにより、上司からの評価は間違いなく上がります。あとは、このような仕事の仕方を繰り返すだけです。そうすることで、「こいつすごいな」と上司から思われるようになっていきます。これが、スピードを圧倒的に速くすることにより、上司からの評価を上げる有効な方法です。短期間ででき、即効性があり、誰にでも実践可能な手段になりますので、ぜひ検討してみてください。

 

(2)発想戦略

発想戦略とは、他人には思いつかないような、独創的、画期的、革新的なアイデアを出し続けるという方法です。スピード戦略と比べて若干努力と時間を要しますが、習得してしまえば確実に高い評価を得続けられる非常に効果的な方法です。そのような発想をする能力は自分にはないという方も多いかと思いますが、心配はいりません。特別な能力は必要ありません。革新的なアイデアというのは、単純な法則に基づいて考えるだけで自然に生まれてくるものなのです。その思考法、つまり単純な法則を身につけてしまえば、あとは簡単にいくらでも革新的なアイデアを生み出すことができるのです。私はビジネスアイデアクリエイターとして、革新的なビジネスアイデアを生み出すためのアイデア思考法を教える仕事をしていますが、ここでは数ある思考法の中でも特に実践しやすいという声の多いひとつを紹介したいと思います。その思考法とは、「反転思考」になります。反転思考とは、物事を反転させて考えることで新たなアイデアを生み出す思考法ですが、考え方として、「なくす」「逆にする」というアプローチがあります。「なくす」というアプローチは、普通であれば絶対に必要なもの、あって当たり前のものを、あえてなくすというものです。「逆にする」というアプローチは、普通の状態とは逆の状態にするというものです。これだけではイメージが湧きにくいかと思いますので、具体例を挙げて説明したいと思います。

 

まず、「なくす」についてですが、「羽のない扇風機」や「椅子のないフレンチレストラン」などが挙げられます。羽のない扇風機とはどのような商品を指しているかは想像できるかと思いますが、そもそも扇風機には羽があって当たり前ですし、風を出すためには絶対に必要なものです。しかし、その羽をあえてなくしました。もちろん、羽をなくしても強い風を出すことができるという技術開発力には素晴らしいものがありますが、ここで言いたいのは、羽をなくすという発想そのものです。扇風機にはなくてはならない羽をあえてなくしたのです。極めて斬新で画期的な発想ですよね。そして重要なのは、羽をなくすことでどうなったかということです。羽をなくすことにより、小さい子供が誤って羽に触れて怪我をする心配がなくなったこと、扇風機の見た目がスタイリッシュになったことなど、大きなメリットが生まれました。あって当たり前のものを思い切ってなくすことで、その代わりに大きなメリットを得ることができたということなのです。もうひとつの例として挙げた、椅子のないフレンチレストランについても同じことが言えます。椅子のないフレンチレストランとはどのような外食店を指しているかは想像できるかと思いますが、フレンチレストランと言えば高級なイメージが強く、カジュアルフレンチであってもスタイリッシュなイメージがあります。立ち食いとは真逆にあるレストラン業態と言えるでしょう。しかし、フレンチレストランであるにもかかわらず、あえて椅子をなくして立ち食いにしたのです。極めて斬新で画期的な発想です。それにより、客の回転率が上がり、低価格で高級な料理を提供できるようになったのです。椅子をなくすことで、非常に大きなメリットが生まれたのです。このように、羽のない扇風機でも、椅子のないフレンチレストランでもそうですが、あって当たり前のものを思い切ってなくすことで、その代わりに大きなメリットを得ることができ、そのメリットにニーズがあるのであれば、必ずヒットします。本当にニーズがあるかどうかは、市場調査をしてみたり、実際に販売してみないとわからない部分もありますが、ここでは、斬新で画期的な発想を生み出すことさえできれば、上司から評価されますので、目的は十分に達成されます。このような画期的なアイデアを、反転思考によって生み出し続けることで、上司は「こいつすごいな」と間違いなく感じるはずです。

 

それでは、「逆にする」というアプローチにも少し触れておきましょう。「逆にする」というのは、白いものを黒くする、大きいものを小さくする、長いものを短くする、というように、普通の状態とは逆の状態にするということです。白いものを黒くする例としては、「黒い綿棒」や「黒いマスク」などが挙げられます。いずれも、普通は白いのが当たり前ですが、あえて黒くした商品が実際に存在しています。綿棒は白いのが普通ですが、あえて黒くすることにより、耳を掃除した時に綿棒に付いた汚れがよく見えるため、きれいに掃除できたという感覚が得られるというメリットが生まれました。綿棒は白い方が清潔感があるようにも感じますが、それを犠牲にしてまでも黒くすることで、全く別のメリットが得られたわけです。黒いマスクも同様のことが言えます。マスクは白いのが普通ですが、あえて黒くすることにより、マスクの内側に口紅が付いても目立たないというメリットが生まれました。マスクが黒いと、外観として怪しく感じるというデメリットもあるのではないかと思いますが、そこをあえて黒くすることで、全く別のメリットが得られたのです。このように、普通の状態とは逆の状態にするというアプローチにより、全く新しい価値、新しいメリットを生み出すことができるのです。そして、斬新で革新的な発想であると評価されることは間違いありません。また、少し余談にはなりますが、このような思考ができるようになると、新たに得られたメリットの部分にニーズがあることがわかれば、更にアイデアを派生させることもできるようになります。例えば、黒くすることで口紅が目立たなくなったという黒いマスクのメリットを派生させて、縁の部分だけ黒いワイングラスがあってもいいのではないでしょうか。このように、単純な法則に基づく思考法を身につけるだけで、次々と革新的なアイデアを生み出せるようになり、上司から高い評価が得られるようになるのです。あとはただ、これを継続していくだけです。わかりやすくて実践しやすく、実際に成果の出ている手法になりますので、今後も長く働きながら、確実に高い評価を得続けようと考えるのであれば、ぜひ挑戦してみてください。

 

反転思考が習得できたあとは、これを継続していくことで、楽して高い評価を得続けることができるのですが、それを実践していく上でちょっとしたテクニックがあります。それは、発想をストックし、コンスタントに分散リリースするという方法です。単純な法則に基づく思考法ですから、簡単に革新的なアイデアを量産することができるのですが、そうは言っても、仕事の状況によって、その波はあるかと思います。そこで、量産できた時は全てを出さずにストックし、アイデアが生まれない時期に出すことで、コンスタントにアイデアを出し続けている状態を作るのです。こうすることで、安定的に高い評価を得続けることができますので、参考にしてみてください。

 

 

ここまで、上司から評価されるための戦略として、短期的なスピード戦略と、長期的な発想戦略について解説してきました。職場の状況、仕事の内容、今後の働き方のプランなどにより、どちらの戦略が適切かは人それぞれかと思いますので、自分の状況と照らし合わせて十分に検討してほしいと思います。上司から評価されない人には、評価されない理由はありません。上司から評価される人には、評価される理由があります。その理由を作ることが大切で、他人よりも圧倒的に優れること、そして上司に「こいつすごいな」と思わせることが重要です。そのための戦略は、非常にシンプルです。是非ともシンプルに考えて戦略を実践していただき、一人でも多くの方が、上司から評価されるようになることを願っています。

社内評価=人が人を評価している

上司から評価されない人には評価されない理由はない

上司から評価される人には評価される理由がある

→何か特定の事柄において圧倒的に他の人より優れている

「こいつすごいな」と思わせる

(1)スピード戦略

・質:量をこなして質を高められる

・量:時間と正の相関

・スピード:質と負の相関

質を犠牲にして圧倒的にスピードを速くする

質の低さよりスピードの速さによる評価が勝る

(2)発想戦略

画期的な斬新なアイデアを出し続ける「反転思考」

・なくす:あって当たり前のものをなくす

・逆にする:普通とは逆の状態にする

→新しい価値やメリットを生み出すことができる